お仏壇の買い替え、引越しや実家の売却時、両親が亡くなったことなどがきっかけで、お仏壇の処分を検討する人は多いです。
株式会社シュフーズによる調査では「仏壇を継承するなら」との質問に「処分する」と回答した人は40%に上りました。
しかし、いざ処分するにしても、お仏壇の捨て方や手順がわからないという人は少なくありません。
また、先祖代々を祀ってきた大切なお仏壇を、粗大ゴミとして処分することに抵抗を感じる方もたくさんおられます。
そこで当コラムでは、お仏壇の処分方法を5つご紹介し、それぞれの特徴や費用、処分時の注意点などもわかりやすく解説します。
お仏壇の処分方法にお困りの方はもちろん、将来的にお仏壇をしまうか検討をしている方も、ぜひ当コラムを参考にしてください。
*参考サイト
仏壇の管理を自らすることになった場合、4割の人が処分したいと回答(株式会社シュフーズ:2020年)
お仏壇の処分方法5つの特徴と費用をわかりやすく解説
お仏壇は「粗大ゴミに出す」「お寺に引き取ってもらう」「仏具店に引き取ってもらう」「不用品回収業者に回収依頼する」「リサイクルショップで売却する」の5つの方法で処分することができます。
それぞれの方法の特徴や費用相場をくわしく解説いたします。
安価で処分したいなら自分で「粗大ゴミや燃えるゴミに出す」
「閉眼供養(魂抜き)※①」を行ったお仏壇は、ご先祖様の魂が入っていない「ただの木の箱」という扱いになります。
そのため、粗大ゴミや燃えるゴミとして処分することができるのです。
粗大ゴミの収集場所にそのままの状態で出すことに抵抗がある場合は、ゴミ処理センターへ直接持ち込むのが良いでしょう。
また、お仏壇を解体すれば燃えるゴミとして指定のゴミ袋に入れて出すこともできます。
▶費用相場:1,000~3,000円ほど(自治体によって異なる)
※①閉眼供養(魂抜き)……仏壇やお墓などに宿っている先祖の魂を抜き取るための儀式
しっかりと供養してもらいたいなら「菩提寺に引き取ってもらう」
お寺によっては、閉眼供養(魂抜き)を行った仏壇を引き取って「お焚き上げ※②」をしてくれるところがあります。
先祖代々の菩提寺があるなら、引き取ってもらえるか相談してみましょう。
この場合、お布施を納めることになるため、いくら包むかは依頼者の気持ちに委ねられることになります。
とは言え、相場を把握するためにもお布施の金額については住職へそれとなく確認してみると良いでしょう。
▶費用相場:10,000~100,000円ほど(要確認)
※②お焚き上げ……浄火で焼いて供養すること
丁寧に扱ってほしいなら「仏具店に引き取りを依頼する」
仏具店の多くは、仏壇・仏具の引き取りや処分を請け負ってくれます。
仏壇・仏具の扱いに長けているので、丁寧な対応が期待できます。
閉眼供養の手配から対応してくれるところもあるので問い合わせてみましょう。
▶費用雄場:20,000~100,000円(仏壇の大きさ、運搬距離などによって変動)
他にも処分したいものがあるなら「不用品回収業者に回収を依頼する」
不用品回収業者の中には、閉眼供養(魂抜き)の手配から対応してくれるところもあります。
おりんや香炉といった仏具も回収してくれるので、分別などの手間もかかりません。
他にも処分したい物がある場合や、急いで処分したい場合には大変便利です。
▶費用相場:処分のみ7,000~25,000円+供養15,000~20,000円ほど(仏壇の大きさや業者ごとの料金設定によって異なる)
お得に処分したいなら「リサイクルショップで売却する」
お仏壇は中古品としての需要が少ないため、買取に対応してくれるショップも少ないです。
しかし、金やプラチナが使用されていたり、アンティークとして価値がある品なら値段がつくことがあります。
高級なお仏壇で状態も良い場合は、査定してもらうと良いでしょう。
ただし、閉眼供養(魂抜き)は自分で手配して事前に済ませておかなくてはいけません。
▶費用相場:処分費用はかからない
お仏壇を処分する際の注意点は5つ!まずは親族の了承を得る
お仏壇を処分する際に、気を付けていただきたいことを5つご紹介します。
処分した後で、貴重品の紛失が発覚したり、親族や菩提寺と揉めてしまうようなケースもあるので要注意です。
●親族に相談して事前に了承を得る
お仏壇の処分については、自分だけで決めず親族にも相談して理解を得るようにしましょう。
先祖代々を祀っているお仏壇を勝手に処分してしまった場合、親族間で揉め事に発展してしまう可能性があります。
●菩提寺にお仏壇を処分する旨を伝える
菩提寺がある場合は、閉眼供養の相談も含めてお仏壇を処分する旨をお話ししておきましょう。
今後もお墓の管理や位牌の供養などでお世話になることもありますし、礼儀としてお伝えしておくのが賢明な対応です。
●宗派による処分方法の違いを確認しておく
宗派によってお仏壇の意味や役割、処分の仕方にも違いがあります。
例えば浄土真宗の場合、「人は亡くなるとすぐに阿弥陀如来によって極楽浄土に導かれる」とされています。
お仏壇は先祖を祀るものではなく、ご本尊である阿弥陀如来を祀る場所なのです。
そのため、閉眼供養(魂抜き)ではなく、ご本尊にご移動いただく「遷座法要」が行われます。
他にも、創価学会の仏壇は、一般的な仏具店では引き取りを行っていません。
創価学会専門の仏具店に引き取ってもらうか、創価学会の本部や支部に引き取ってもらうことになります。
●処分前に仏壇の引き出しを確認する
お仏壇には仏具を入れるための収納や隠し収納があるものも多いです。
そしてその中には、通帳、印鑑、宝飾品などの貴重品や、遺言書、証書類などの重要書類を入れる人もいます。
万が一、失くしてしまっては大変なので、出し忘れがないかしっかりと確認してください。
自分では入れていなくても、親や祖父母が入れているようなケースもあるため、見落としがないように気を付けましょう。
●仏具は材質ごとに分別する
仏具はそのまま捨てるのではなく、金属や木材など、各自治体のルールに則って材質ごとに分別して処分しましょう。
仏具は供養を行う必要はありませんが、ゴミとして処分することに抵抗を感じる場合は、仏壇と一緒に引き取ってもらいましょう。
不用品回収業者なら分別する必要もなく、まとめて引き取ってもらえます。
菩提寺や仏具店に仏壇を引き取ってもらう場合は、仏具の引き取りもしてもらえるか相談してみてください。
処分後の供養方法を決めて閉眼供養(魂抜き)の手配をする
お仏壇を処分する際には、今後、ご本尊やお位牌をどのように供養していくかを考えておかなくてはいけません。
この章では、お仏壇の処分後の供養方法や閉眼供養(魂抜き)の手配の仕方、お布施の渡し方などをご紹介します。
お仏壇処分後のご先祖様の供養方法を決める
お位牌やご本尊の供養方法としては「新しいお仏壇に納める」「お寺で永代供養してもらう」の2つの方法があります。
●新しいお仏壇に納める
近年では、住宅事情の変化からお仏壇を小さくてシンプルなものに買い替える人が増えています。
その場合は、ご本尊やお位牌を新しいお仏壇へ納め、僧侶に開眼供養(魂入れ)をしてもらいます。
小さなお仏壇にご本尊やお位牌が入らない場合は、小さく作り直してもらうこともできます。
●お位牌を菩提寺へ預けて永代供養してもらう
自宅でご本尊やお位牌を安置するのが難しい場合は、菩提寺に預けて永代供養してもらう方法が良いでしょう。
永代供養といっても、管理・供養の年数は数年(13年や33年など)で区切られており、それ以降はお焚き上げされます。
期限が来る度に更新できるところもあれば、期限までで終了するところもあります。
菩提寺で永代供養を行っていない場合は、他のお寺や霊園で行ってくれるところを探しましょう。
▶永代供養の費用相場:100,000~500,000円ほど
閉眼供養(魂抜き)の手配をする
仏具店や不用品回収業者にお仏壇を引き取ってもらう場合では、閉眼供養(魂抜き)の手配もしてくれることが多いです。
しかし、「粗大ゴミに出す」「リサイクルショップで売却する」場合には、自分で閉眼供養(魂抜き)の手配を行う必要があります。
菩提寺がある人はいつもお世話になっている僧侶へご相談し、閉眼供養していただきましょう。
菩提寺がない方は、近くのお寺に相談してみてください。
檀家以外の供養を受けていないお寺も多いですが、中には対応してくれたり、僧侶の派遣を紹介してくれたりすることもあります。
閉眼供養(魂抜き)の儀式にかかる時間は30分~1時間ほどです。
閉眼供養(魂抜き)のお布施の費用と渡し方
「御布施」と表書きした奉書紙、または白い封筒にお金を入れて、「切手盆」というお盆の上に置いてお渡しします。
切手盆がない場合は、お布施を包んでいた袱紗(ふくさ)をきれいにたたんで、その上にお布施をのせて渡してください。
お車代をお渡しする場合は、別に白い封筒を用意して「お車代」と表書きしてお金を入れます。
お布施の下にお車代の封筒がくるようにしてお盆に置き、お渡しする際には僧侶から表書きが読める向きにしてお渡ししましょう。
お渡しするタイミングは閉眼供養の前後どちらでも構いません。
▶閉眼供養(魂抜き)のお布施の相場:10,000~50,000円ほど
▶お車代の相場:5,000~10,000円ほど
▼お布施をお渡しする際の挨拶例
本日はよろしくお願いいたします。ささやかではございますがお礼の気持ちです。
本日はご丁寧なおつとめを賜りありがとうございました。お布施をお納めください。
お仏壇処分の手順を解説!円滑に進めるためのポイントもご紹介
ポイントを押さえれば、お仏壇の処分もスムーズに進められます。
①処分方法を決める
お仏壇を処分するにあたり、後悔のないよう自分にとって最善の方法を選択しましょう。
②見積もりを取り、日時や運搬方法を確認する
依頼先と相談して、閉眼供養する日やお仏壇を引き取ってもらう日程を決めます。
お仏壇の大きさによって、費用も運搬方法も変わってくるので、正確に採寸して見積もりを作成してもらいましょう。
③閉眼供養(魂抜き)を行う
僧侶にお越しいただき、閉眼供養をしてもらいます。
④お仏壇の運び出し
依頼先まで自力で運ぶ、または引き取りに来てもらいます。
不用品回収業者に依頼するなら優良業者を選ぶことが大切
高齢者など体力的にお仏壇を自力で運ぶのが難しい、他にも処分したい物がある、急いで処分したいなどの事情もあるでしょう。
こういった事情を抱える人には、不用品回収業者への依頼がおすすめです。
費用が高額になるイメージを持つ人も多いですが、他にも処分したい物がある場合などでは逆に割安になることもあるのです。
また、供養分の費用も含めて考えると、菩提寺や仏具店に引き取ってもらうより安く済むこともあります。
不用品の買取を行っている業者もあるので、業者選びにこだわれば便利なうえにお得に処分することも可能です。
ただし、不用品回収業者の中には、一部ですが悪徳業者も紛れており、誤って依頼すると被害に遭う可能性もあります。
高額な追加請求、不法投棄、盗難などの被害に遭わないためにも、優良な業者選びのポイントを知っておきましょう。
信頼できる不用品回収業者選びのポイント6つ
優良な業者の 見極めポイント | ここに注目! |
一般廃棄物収集運搬業許可、古物商許可を取得している | ・無許可の場合、適切な方法で処分されない可能性が高い(不法投棄など) ・古物商許可がなければ中古品の売買はできない |
ホームページがしっかりと作り込まれている | ・会社概要、実績、料金、作業事例などが詳細に記載されているほど信用度が高い ・簡易的なホームページはすぐに削除して逃げられることから信用度が低い |
口コミの評価が総合的に良く信憑性がある | ・利用者数が多い(作業実績が多いと判断できる) ・星は平均3以上を目安に絞り込む(評価基準は人それぞれのため評価内容に注目することと低評価が少ないことのほうが重要)※③ ・高評価と低評価がに二極化していない(二極化している場合、高評価はやらせの可能性がある) |
電話や接客での対応が丁寧で誠実 | ・話し方、態度、身だしなみ、説明の明快さ、誠実さなどをチェックする |
見積もりが明確 | ・何にいくらかかるのかがわかりやすく記載されているか ・追加料金がかかる例を説明してくれるかどうか ・極端に安い見積もりは、後から追加請求される可能性がある |
3社以上で相見積もりをする | ・相見積もりに快く対応してくれるか(相見積もりを嫌がる業者は避けるのが無難) |
※③参考サイト……【星の数、評価の基準は人それぞれ】「満足でも不満でもない時」”☆5”を付ける方も1割弱いる 日本トレンドリサーチ・評価に関する調査(株式会社NEXER:2021年)
まとめ
お仏壇の処分には、自分で粗大ゴミに出す、菩提寺や仏具店、不用品回収業者に引き取ってもらう、売却するなどの方法があります。
どの方法を選ぶにしても、処分前には「供養を行う」「親族や菩提寺への相談」「貴重品を出し忘れない」などに注意してください。
お仏壇は、信仰対象であるご本尊やご先祖様をお祀りする場所で、お家の中に小さなお寺があるようなものです。
そのため罰当たりにならないためにも、お仏壇を処分する前には閉眼供養(魂抜き)、あるいは遷座法要を忘れてはいけません。
また、通帳や印鑑、遺言書、証書類などの貴重品を誤ってお仏壇と一緒に処分してしまったら大変なので気を付けましょう。
実は筆者も、今現在お仏壇やお墓の処分について家族と話し合っているところです。
家族それぞれ、お仏壇に対する考えや思い入れも異なるので、皆の意見を聞き、話し合うことの大切さを実感しています。
処分後に後悔することがないように、いつ行うのか、その後の供養はどうするのかなどを十分に検討して最善の選択をしてくださいね。